さめない街の喫茶店

「さめない街」は「覚めない街」。

主人公のスズメは、
現実の世界で眠りについてから、ずっと夢を見ている。

そして物語は全編通して、夢の中。
現実世界が描かれているのは、
冒頭の1Pのスズメが眠っているシーンのみ。


-『さめない街の喫茶店』1巻より-

●ざっくりあらすじ
ある日いつも通り眠りについたスズメ。
目が覚めたら(覚めずにずっと夢を見続けているんだから
「覚めた」という言い方は、この場合適切ではないが)
夢の中の世界「ルテティア」という街の
第4区にあるキャトルという喫茶店にいた。
それ以来、喫茶店に居候し、お菓子や料理をつくっている。

●みどころ1:ルテティアという街の謎
「ルテティア」はちょっと不思議な街。
魔法使いがいたり、猫が家ほど大きかったり、妖精が住んでいたり。

別に、何が起きても不思議ではない。夢の中だから。

言葉の由来を調べてみると、ルテティアというのは
パリの前進となったローマ時代の都市の名前だそう。
ルテティア/パリ-世界史の窓
街の形成方法がパリの街をベースに考えられているのか?
街が第1区から第5区までで区切られ
それぞれの区が特徴だっているのも
何かに準えているのだろうか。

まだ1巻で全貌が何も明らかにされていないので、
もしかしたら深い意味はないのかもしれないが。

フランスの世界観を土台にしているのは確か。
登場する料理もフランスのものが多い。

●みどころ2:作ってみたくなるスズメのお菓子
スズメが居候している「ハクロ」という男性が
営んでいる喫茶店「キャトル」は、基本お客がこない。
「そんなことでいいのか」とスズメは気を揉むが、
そんな現状に一切気にすることなくハクロは、
今日もスズメにお菓子をねだる。

そしてルテティア住民たちにねだられ、
スズメは美味しそうなお菓子を次々と作っていく。

ケークサレ、いちごタルト、シュークリーム、ブラウニー

お菓子だけなく、 パテドカンパーニュとサングリア
バゲットで作ったタルティーヌも出てくる



-『さめない街の喫茶店』1巻より-

丁寧に料理の工程が描かれ、
絵柄も内容もとてもシンプルなのに、
ゆっくりゆっくり、まるで一緒に作っている
ような感覚にさせてくれる。



●さめないで
スズメはよく、現実の世界を思い出しながら料理をする。
その姿がなんとも気持ちよく眠たそうで、
「夢の世界なんだなあ」と思わせられる。


-『さめない街の喫茶店』1巻より-

このほっこりとしたなんとも言えない雰囲気がたびたび出現

しかし現実をだんだん思い出せなくなってきている描写があり
ただのほっこりファンタジー設定の漫画では
ないような気配が。

「実は不慮の事故で寝たきりになっている主人公が
この世とあの世の境をフラフラしている」
みたいな安い設定だったら萎えてしまうけど。

「もうちょっと布団の中にいたい」のような気持ちで、
「ずっと覚めなきゃいいのに」と思ってしまう。
そんな作品だ。